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米国の輸出統制制度
■ 概要
ㅇ 米国は第2次世界大戦後、多国間輸出統制調整委員会を通じて、大量破壊兵器などの軍需物資の輸出統制を主導しています。2001年9・11テロ以降、米国は戦略物資の輸出統制を強化しており、2003年からは拡散防止構想(PSI; Proliferation Security Initiative)を介して大量破壊兵器及び戦略物資の輸送遮断、物質差し押さえ、資産凍結活動などの統制領域を拡大しています。
ㅇ 米国は輸出統制に関連して、自国はもちろんであり、自国の領土外の米国産品目及び米国産部品が含まれている外国製品と外国人(個人、法人)の取引行為にも管轄権を行使するなど国内法を域外適用しています。
ㅇ 企業がテロ支援国(イラン、シリア、キューバ、スーダン、北朝鮮)や禁輸国など、米国の経済制裁対象国に再輸出したり、または米政府の輸出拒否命令(denial order)によって禁止されている取引をしたり、取引禁止された最終使用者や最終軍事的用途に再輸出する場合にも、やはり許可が必要です。
■ 根拠法令
ㅇ 敵性国交易法(TWEA; Trading With the Enemy Act of 1917)
ㅇ 国際非常経済権限法(IEEPA; Int'l Emergency Economic Powers Act of 1977)
ㅇ 輸出管理法(EAA; Export Adminstration Act of 1979)
ㅇ 武器輸出管理法(Arms Export Control Act)
ㅇ 原子力法(Atomic Energy Act of 1954)
ㅇ 核兵器の拡散防止のための法律
- 核不拡散法(Nuclear Nonproliferation Act of 1978)
- 輸出入銀行法(Export-Import Bank Act of 1945)
- 核拡散防止法(Nuclear Proliferation Prevention Act of 1994)
- イラン及びイラク武器不拡散法(Iran-Iraq Arms Nonproliferation Act of 1992)
- イラン不拡散法(Iran Nonproliferation Act of 2000)
ㅇ 生化学兵器及びミサイルの不拡散のための法律
- 生化学兵器統制及び戦争除去法(Chemical & Biological Weapons Control and Warfare Elimination Act of 1991)
- 生物反テロ法(Biological Anti-Terror Act of 1989)
- ミサイル技術統制法(Missile Technology Control Act of 1990)
■ 輸出統制品目
ㅇ 米国の戦略物資輸出統制品目は、二重用途(Dual Use)品目、軍用品目、原子力品目に大別されます。
- 二重用途品目は商務部産業安保局(BIS:Bureau of Industry&Security)で担当し、
- 軍用品目は、国務部国防交易統制局(PM / DTC:Political-Military / Directorate of Defense Trade Control)で担当し、
- 原子力品目については、エネルギー部国家核安保庁(NNSA:Natioanl Nuclear Security Administration)が担当しています。
ㅇ 米軍用物資の輸出統制は、国際武器取引規定(ITAR: International Traffic Arms Regulations) Part120でPart130まで、その統制品目を明示しています。
- 国際武器取引規定(ITAR)Part121には、米国軍用戦略物資品目(USML; US Munitions List)上の軍用物資/サービス(Defense Articles&Services)を軍用戦略物資品目に明示しています。
■ 輸出管理規定(EAR; Export Administration Regulations)
ㅇ EAR(Export Administration Regulations)は、米国の国家安保、対外政策、WMDとミサイルの拡散防止と供給が不足している商品の制限のない輸出がもたらす悪影響から米国を保護するために、また、UNの制裁措置など、国際的義務を履行するために、二重用途品目(dual-use items)の輸出及び再輸出を統制し、米商務部の産業安保局(BIS:Bureau of Industry and Security)が実施しています。
- 二重用途品目(dual-use items)は商務部以外の輸出統制政府機関の統制品目と区別するために軍事的․戦略的用途及び商業用途の二重に使用可能な品目を指します。
- 二重用途(dual use)は、国務部管轄の武器及びその他の軍事用途の統制品目とエネルギー部と原子力規制委員会(NRC)管轄の核関連統制品目と区別するために使用されており、EARの全体的な対象範囲に該当されます。しかし一方EARは、純粋に民間用途のみに使われる、いくつかの品目にも適用されます。
□ EAR適用対象
ㅇ 次の品目は、米国の輸出管理規定(EAR)に基づいて、事前に商務部の許可が必要です。
- 米国内に存在するすべての品目
- すべての米国産製品(生産地及び所在地については、国内外を問わず)
- 米国産の商品、技術、ソフトウェアが最低基準(Deminimis Rule)を超えて編入された外国産の品目
- 特定の米国産の技術やソフトウェアを利用して、外国で製造された直接製品
- 直接製品である工場で生産された製品
ㅇ ① 一定の割合を超えて米国産部品を使用して輸出国で製造された製品を第3国に再輸出する場合と② 輸出国で米国の製造技術で作られた製品(直接製品)を第3国に輸出する場合にも輸出管理規定(EAR)に基づいて、事前に商務部の許可が必要です。
ㅇ 米国の技術やソフトウェアを扱う他国企業が外国人労働者や訪問外国人にその技術を公開する場合も、事前に許可を受けるようにEARに規定されています。
- すなわち、米国は外国に移転された技術が再び外国内の第3国の外国人に提供される場合、その技術が第3国に輸出されたものとみなして、これを統制しているのです。
- また、同技術を電子メール、ファックス、電話などの手段で、第3国に伝達する場合(ITT、すなわち技術の無形移転)にも同様に事前に米国商務部の許可が必要です。
※ 担当部署 : 商務部産業安保局(BIS) 輸出執行室(Office of Export Enforcement)
□ EARの適用手順
ㅇ EARはWMD不拡散のための米国の二重用途物資輸出統制関連法令として米国商務部の許可が必要かどうかを確認するためには、大きく二つの手順が必要です。
ㅇ 最初に扱う品目がEARの対象であるかどうかを判断します。
- 米国産ならEAR対象であり、外国産品目であっても編入されている米国産品目の価額が外国産品目の価額に比べ最低基準(Deminimis Rule)を超える場合は、EARの対象となります。取り扱い品目はEAR対象がない場合は、米商務部の許可は必要ありません。
- 最低基準(Deminimis Rule)は、イランㆍ北朝鮮ㆍシリアㆍキューバㆍスーダン(テロ支援国、E:1所属国)を目的地とする場合は10%、その他の地域の場合25%が適用され、統制番号の後の3桁が600番帯(600 series)である品目の場合には、前述した5カ国をはじめ、米国務部で指定された武器禁輸国(D:5所属国)への(再)輸出時には0%が適用されます。
ㅇ 二番目にEAR対象品目であれば、その品目が米国の統制品目リスト(CCL; Commerce Control List)に列挙された品目かどうかを確認する必要があります。
□ EAR統制品目(CCL; Commerce Control List)
ㅇ 米国は、CCLに国際輸出統制体制品目だけでなく、テロ防止、犯罪取り締まり、供給不足、UN制裁措置の履行などのために独自(Unilateral)に統制品目を指定して、非常に広い輸出統制を施行しています。
ㅇ 米商務部の制御リスト(CCL:Commerce Control List)は、輸出統制分類番号(ECCN; Export Control Classification Number)が付与されたECCN品目と、米国の独自統制品目であるEAR99品目で構成されています。
ㅇ CCLの構成
カテゴリー | 分 野 | ECCNs | 備 考 |
Cat. 0 | 核物質、設備及び機器 | 0A001~0E984 | 各ECCNに分類されていないEAR対象品目はすべてEAR99に該当 |
Cat. 1 | 先端材料、化学、生物 | 1A001~1E998 | |
Cat. 2 | 材料加工 | 2A001~2E994 | |
Cat. 3 | 電子 | 3A001~3E991 | |
Cat. 4 | コンピュータ | 4A001~4E993 | |
Cat. 5 (P1) | 通信機器 | 5A001~5E991 | |
Cat. 5 (P2) | 暗号装置 | 5A001~5E992 | |
Cat. 6 | センサーとレーザー | 6A001~6E993 | |
Cat. 7 | 航法と航空電子 | 7A001~7E994 | |
Cat. 8 | 海洋関連 | 8A001~8E992 | |
Cat. 9 | 推進装置、宇宙飛行体 | 9A001~9E993 |
ㅇ ECCNの構成
- ECCNは、数字とアルファベットを組み合わせた5桁で構成されています。
- ECCNは、例えば2A991の第一桁2はカテゴリー、第二桁Aは品目形態、第三桁は統制理由(数字が9である場合、米国の独自統制理由)、第四桁の数字0〜8は単純な区分番号であり、 9は米国の独自統制品目、第五桁の数字1はシリアル番号を指します。
- このように、米国の独自統制品目はECCNの5桁のうち後の三桁が900番帯である品目に区分されます。
ㅇ 米国はCCL上に含まれていませんが、EARの適用を受ける品目を「EAR99」と総称しています。EAR99品目は一般的に許可を要しないが、(NLR; No License Required)、禁輸国及び制裁国に輸出時または禁止された最終用途に輸出される場合には、商務部の許可を受けなければなりません。
□ EAR許可申請
ㅇ 米商務部産業安保局(BIS)は、戦略物資の輸出管理のためにSNAP-R(Simplified Network Application Process Redesign)というオンラインシステムを運営しています。企業は、このシステムを介して輸出/再輸出許可及び判定申請をすることができ、申請された民願の処理状況をオンラインで照会することができます。
☞ SNAP-Rサイト :
https://snapr.bis.doc.gov/snapr/
☞ SNAP-R FAQページ :
https://snapr.bis.doc.gov/snapr/docs/snaprFAQ.htm
■ 検証されたエンドユーザー制度(VEU; Validated End User)
ㅇ 検証されたエンドユーザー制度(VEU)とは、民間用途でのみ使用するとの確実な記録を持つエンドユーザーとの貿易を促進するために、これらのユーザーに特定の品目を個別輸出許可なしに輸出することを許可する米国の輸出統制制度です。
- この制度は、効率的な貿易の実現と輸出許可の負担を軽減しようと、現在は中国とインドについて実施されています。
- 検証されたエンドユーザー(VEU)で指定されると、輸出の際に、個々の輸出許可なしに、すぐに船積みが可能です。米国政府は、この制度の施行に貿易促進になると期待しています。
ㅇ 検証されたエンドユーザーに指定されるためには、書類保管能力を備えなければならず、VEU条件遵守を確認するため、現地調査に同意する必要があります。
- 輸入した製品を民間用途でのみ使用することを確実に証明することができれば防衛産業物資取引に参加する企業も申請することができます。関連書類を具備して申請すると省庁間の検討を通じて、30日以内に指定するかどうかが通知されます。
ㅇ VEUとして認証されると、米国の輸出管理規定(EAR)Part748 Supplement7に企業名が掲載されます。登録後は、すべての輸出及び再輸出者が当該企業を対象に許可なしに輸出することができます。
■ 輸出統制業務関連の政府機関
ㅇ 戦略物資の輸出統制を規制するための権限と責任は、統制対象と統制手段により、米国政府の様々な機関が担当しており、統制業務は、米国輸出統制システムの原則的な相互協力により、相互補完的に行われています。
ㅇ 統制対象物資に基づいて、米国はエネルギー部、商務部、国務部、財務部など所管省庁から輸出許可を担当しています。
- 国防部傘下の国防技術保安庁(DTSA; Defense Technology Security Administration)は技術移転、輸出統制関連政策に対する米国防部の立場を代表し、商務部、国務部の輸出許可(E/ L; Export License)申請書を検討して国防部の最終的な立場を伝えています。
- 銃器の輸入申告は、国土安保部(Homeland Security)が担当しています。
□ 商務部(Commerce)
ㅇ 統制対象
- 二重用途品目と技術データの輸出と再輸出及び再移転
ㅇ 根拠法及び規定
- 輸出管理法 (EAA, 1979)
- 核不拡散法 (Non-Proliferation Act)
- 輸出管理規定(EAR; Export Administration Regulations)
ㅇ 担当部署
- 商務部産業安保局(BIS: Bureau of Industry & Security)は、輸出管理規定に基づいて、二重用途品目の輸出を統制し、輸出行政、国際プログラム、輸出執行を担当しています。
□ 国務部(State)
ㅇ 軍用戦略物資統制の主管部門である国務部は、米国の対外政策、国家安保と国際輸出統制制度を考慮して、国防貿易業務を担当しており、Executive Order 11958に基づいて国防部国防技術保安庁(DTSA)と一緒に輸出対象品目が軍用物資品目(USML; US Munitions List)に該当するか否かを決定しています。
ㅇ 統制対象
- 武器や防衛産業物資、関連する技術データの輸出と再輸出
ㅇ 根拠法及び規定
- 武器輸出統制法(AECA, 1976)
- 国際武器取引規定(ITAR)
ㅇ 担当部署
- 軍用戦略物資輸出統制は国務部6次官(Under Secretary)中の無機統制及び国際安保次官が担当し、政治軍事業務局傘下の国防貿易統制局(PM / DTC; Directorate of Defense Trade Control)で輸出許可業務を担当しています。
□ エネルギー部(Energy)
ㅇ 統制対象
- 原子力関連技術データの輸出と再輸出、原子力機器や核物質の再輸出
ㅇ 根拠法及び規定
- 核エネルギー法(AEA, 1954)
- 核不拡散法(Non-Proliferation Act)
- 外国原子力活動支援規定
ㅇ 担当部署
- 国家核安全庁(NNSA)輸出統制政策協力室(OECPC)
□ 財務部(Treasury)
ㅇ 統制対象
- WMD拡散関連活動及び規制対象国との輸出入、金融取引、対象国の資産及び輸出または再輸出
ㅇ 根拠法及び規定
- 敵性国交易法 (Trading with the Enemy Act),
- 国際緊急経済権限法 (IEEPA)
- 海外資産管理規定
ㅇ 担当部署
- 海外資産管理部(OFAC)
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